内装にも料理にもあふれるサービス精神。

てっちゃん

TEXT/KAGEHIRO WATANABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

壁を埋め尽くす古めかしいメンコにお面にダルマにレコード・・・・・・。これだけでも、一度来たらもう忘れられない居酒屋「てっちゃん」。元々は、舟があったり、大漁旗があったり、錨があったりと、海鮮料理を扱うお店らしい内装だったそうですが、いつの間にやら昭和グッズでいっぱいに。始まりは、店長の阿部さんが、お客さんとカウンター越しに顔を合わせるのが気恥ずかしくて、メニューや雑誌の切り抜きを貼ったことなのだとか。常連のお客さんに「20年通ってて初めて店長の顔を見た」と言われたこともあるほどのシャイな阿部さん。でも、お客さんを喜ばせたいという気持ちは人一倍です。舟盛りをメインメニューにしたのも、できるだけたくさん食べてほしいからなのです。

取材時に、盛り付けるタコの足がまな板から落ちそうなほど動いていたのは、新鮮なネタを仕入れている証。舟盛りのネタはだいたい20~25種類。その内容は海の状態や季節によってかわり、「お客さんが飽きるから」と、珍しい魚を積極的に仕入れたりもするそうです。量ももちろんサービスしています。写真の舟盛りは2人前。かなりのボリューム。以前、このお店では人数分の舟盛りを注文することになっていましたが、お客さんのご要望が増えたため、今は、食べたい分だけ、と変更しています。それでも食べきれない場合には、舟盛りのネタを炒めて出し直すサービスあり。てまき寿司セットで食べるのもおすすめです。

お通しはタラバガニとエビ。北海道らしい食材が最初から出てきます。さらにメニューには、ジンギスカンに、いくら丼に、いもバター・・・・・・。ホテイウオを使った北海道の郷土料理、ごっこ汁も。お正月には、自らさばいてシカの肉を出したりもしたそうです。このお店だけで北海道の味を満喫できてしまう。しかも全部リーズナブルなお値段で。旅行で北海道へ来た人もそうでない人も、このお店へ来ればきっと、楽しく満腹になれることでしょう。そんなサービス精神旺盛なお店でした。