今日はボンゴレ、明日はコーヒー。
スパゲティの店 15丁目 TEXT/REINA ABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHIランチの時間を過ぎても、お客さんの姿は途切れません。温かいスパゲッティで遅めの昼食にありつく人もいれば、コーヒーを頼んでしばらく過ごす人も。ほうきに乗った魔女の看板が目印の「15丁目」を切り盛りするのは、竹内さん親子です。2階はデザイン事務所になっており、デザイナー兼レストランオーナーとして味を守ってきた先代が、今も時おり顔を覗かせます。壁にかかっている、お店の外観を描いた繊細な貼り絵も先代の作品。テーブル席から見渡せるほどオープンなキッチンは、長年使い込まれた雰囲気ながら、白いタイルの壁に赤い柄のレードルが等間隔で並び、すっきりと整理されています。
「15丁目」は、もともと喫茶店として1972年にスタートしました。30年も前のこと、展示会に参加するためヨーロッパを旅したとき、イタリアで食べたパスタの味が忘れられなかったという先代。札幌に戻ってからレシピの研究を重ね、その後スパゲッティ専門店としてリニューアルしました。厨房を任されて10年ほどという息子さんは、「メニューを決めて来る常連さんも多く、当初は先代からの味を再現するのに苦労しました」と話します。今も食材や調理法は変えずにおいしさを上げていくための工夫は欠かせません。また、できるだけ注文したお客さんの顔を見てから作り、高齢の常連さんであれば味をわずかに薄くしたりと、細やかな調整をしているそうです。こだわりすぎず、素材の味を生かしてシンプルに。そんな思いは、しっかりと受け継がれています。
パスタはイタリアの「バリラ」製を使用。ソースの作り置きはしないといい、「ボンゴレロッソ」は別海町のあさりに、ホールトマトと白ワインで一気に仕上げています。北海道産ベーコンの風味がきいた「カルボナーラ」はなめらかで濃厚です。旬の食材で作るスパゲッティも人気で、春は菜の花、アスパラガス、夏はベビーリーフ、海水うに、秋は鮭、冬は牡蠣……と続いていきます。特におすすめなのが「春キャベツとあか毛和牛のコンビーフ」。毎年4月頃に八百屋さんからの連絡を待って登場する、春キャベツの歯触りと「神内ファーム21」のあか毛和牛100%コンビーフの旨みがたまらない一品です。おなかがいっぱいのときには、ぜひコーヒーを。15丁目オリジナルブレンドは、開店当時のままの味わい。20年ぶりに来店したお客さんも「変わらない味」と喜んでいたそうです。