なんでもない昼休みの至福。

札幌 うまいランチ寿司3選

TEXT/REINA ABE, KAGEHIRO WATANABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

回転していないおすし屋さんには入りにくい、なんて思っている方でも、ランチなら気軽に足を運べるはず。一流のお店の握りをリーズナブルなお値段で味わうちょっと贅沢な昼休み。ランチでも、そのときどきの旬のネタを堪能できますし、いつもと違うセットならではのメニューを楽しめたりもします。おすし屋さんへよく行く方もそうでない方も、札幌の中心街にある名店めぐり、ランチから始めてみてはいかがでしょうか。

景色とともに味わう、おもてなしの鮨。
鮨棗 赤れんがテラス店

窓のむこうに広がるのは、赤れんが庁舎のやわらかな新緑。都心にありながら、北海道の自然を感じる空間です。「鮨 棗(なつめ)」は、すすきの屈指の人気店。2011年の開店以来、予約必至の名店として知られてきました。その「鮨 棗」が2014年、赤れんがテラスに新店をオープン。カウンターに立つのは、職人歴30年の名取さんと職人歴10年の四十榮(よそえ)さんです。名取さんは小学生の頃から寿司職人を目指し、大阪で修行したのち札幌へ。四十榮さんは港町の出身で、寿司は昔から身近なものだったといいます。軽やかに丁寧に握りながらも、お客さまへのさりげない気配りと会話は、途切れることがありません。

ランチメニューは、にぎり寿司のセット、ちらし寿司のセット、お昼の旬のおまかせコースから選べます。13時からは一日限定20食のレディースセットも。にぎり寿司のセットは、棗(なつめ)・葵(あおい)・楠(くすのき)の3種です。葵は、中トロ、ボタンエビ、ウニ、イクラなど9貫。小ぶりのシャリが口の中でほどけ、ネタそのものの旨みを引き立てます。ミニサラダとみそ汁または茶碗蒸しがつき、満足感もたっぷりです。
夜になればカウンターのガラスケースの脇に、旬の野菜やきのこを持った籠が。おまかせコースや寿司はもちろん外せませんが、一品料理を合間にはさみつつ飲むのもおすすめ。海の幸、山の幸の旨いところを味わい尽くす、まさに至福の時間といえそうです。

6月からは、支笏湖のチップ(ヒメマス)、日本海のウニやアワビなどが登場。サヨリやシマアジなど、北海道産に限らず、取引きのある魚屋が独自に仕入れてくる関東や九州の魚も取り揃えています。いつも同じようなネタや素材ばかりではお客さんも自分たちも飽きてしまうからと、常に新しいものを探していると話します。
「棗」の名は、代表である大坂さんのおばあさんが留萌で営んでいた小料理屋「夏目」の音にちなんだもの。そんな原点からもうかがわれるとおり、入りにくさや堅苦しさは皆無。一見でも一人でも、けして心細くさせない雰囲気です。カウンターのお二人も「志は高く、敷居は低く」と口を揃えます。今いちばん美味しい素材を、リラックスして楽しんでほしい。そんな心意気にあふれたお店です。


鮨棗 赤れんがテラス店

札幌市中央区北2条西4丁目1 札幌三井JPビル(赤れんがテラス)3階
TEL.011-205-0010
営業時間/ランチ 11:00~15:00(L.O.14:30)
     ディナー 17:00~22:30(L.O.22:00)
定休日/年中無休


最後のひと口にまでゆきわたる心配り。
寿し心 なかむら

札幌のまさに中心部、地下歩行空間(チ・カ・ホ)と直結した敷島ビルの地下1階にある「寿し心(すしごころ) なかむら」。約30年の歴史があるお店で、最初は南3条で3年ほど。次にすすきので15年。現在の場所でもすでに13年が経ちますが、すすきの時代からの常連さんも少なくないのだとか。飲食店がひしめき合うこのエリアで、場所がかわってもお客さんが離れないお店。といっても、常連さんじゃなければ入りにくい、なんてことはありません。しかもランチならもっと気軽です。お昼時にはすぐに席が埋まってしまいますが、事前に予約しておけば大丈夫ですよ。

ランチメニューは、数量限定の日替り弁当、まぐろ鉄火丼、そして、握りと巻物のセットが3種類。特におすすめなのは、鉄火巻きがついてくるお得な「Cセット」です。ランチなので手ごろなお値段ですが、ネタは夜に出しているものと同じ。熟成させた合わせ酢と旬の魚介を使った本格的なお寿司が堪能できます。もちろんネタは毎朝市場で仕入れている厳選食材。ランチをやっているからこそ、すぐに使い切ることができて、いつも新鮮なものだけを提供できる、とのことでした。

セットには、ムースやクレープ、黒糖寒天など、お寿司屋さんとしては珍しい日替わりの手作りデザートもついてきます。スイーツが好きな親方直伝のメニューなのだそうです。どれも甘さひかえめの上品な味で、この〆を楽しみに来るお客さんもいるというのも納得。
おなかに余裕があるなら、かにシューマイもぜひ。ズワイガニがぎっしりつまった熱々のシューマイに辛子や紅葉おろしを添えて、ポン酢をつけて頬張る。中華料理屋さんで食べるのとは一味違う、ふんわりとしていながら濃厚な、どことなく和風な味わいです。それに、お昼でも握りやお刺身を頼めますので、セットメニューのほかに一・二貫追加なんて贅沢も。特に土曜日には、ゆっくりと食べていくお客さんが多いそうですよ。行きつけのお寿司屋さんを増やすのにまずはランチから、なんていかがでしょうか?


寿し心 なかむら

札幌市中央区北2条西3丁目 敷島ビルB1F
TEL.011-219-1221
営業時間/11:00~14:00
 (日曜・祝日はランチメニュー無し)
      17:30~23:00
 (日曜・祝日は22:00まで)
定休日/不定


まちがいない正統派寿司。
寿司の福家

のんびりと市電が行き交う通りの風景。その南1条通りに面したビルを地下に降りたところに「寿司の福家」があります。札幌大通のど真ん中というロケーションも手伝って、昼も夜も地元客や観光客が訪れるお店は、華やかな佇まい。明るく入りやすいカウンターと小上がりが並びます。お客さんが帰りがけに冗談まじりに話しかければ、カウンターごしに機転のきいた言葉が返ってきます。気さくな雰囲気の寿司職人・吉川さんに聞けば、「女性ひとりでもけっこういらっしゃいますよ」とのこと。その言葉どおり、ランチタイムを少し過ぎたカウンターでは、女性がひとり、にぎりを楽しんでいました。

握っていただいたのはランチの「Aセット」。ネタの内容は日によって変わることもあるそうですが、この日はカンパチ、マグロ、ほたて、サーモン、いか、甘えび、〆鯖、いくら、とびっこ。このにぎり9個に茶碗蒸し、サラダ、お椀がついて1,000円以下。この価格にびっくりしてしまいますが、なんとさらにリーズナブルな「得々セット」もあるとは、うれしいかぎり。生ちらしの「Bセット」、にぎり8個とねぎとろ巻き1本の「Cセット」なども人気だそうです。味、ネタの新鮮さ、手際のよさにうるさいビジネスマンが頼りにする店、というのも大きくうなずけます。ランチタイムはセットものがメインですが、お好みでもにぎってくれます。取材時、ガラスケースの中で特に目を引いたのが子持ちのシャコ。6月には積丹のウニが入ってくるそうです。

なんだか縁起もよく親しみやすい店名は、寿司職人でもある社長さんの名字が「福家」であることから付けたそうです。職人さんは4人。お店は今年で15年目となりますが、開店以来ずっと同じメンバーでやってきたといいます。きびきびとした動きや手つきは見とれてしまうほどです。職人さんにとっては、つねに見られていることから来る、いい意味での緊張感。ここでの寿司はやはり、カウンターがおすすめです。ランチセットはリーズナブルですが、その実は正統派の寿司と和食の店。夜はひとりで、宴会で、家族でと、使い方もさまざま。おまかせのにぎりと、焼き魚、天ぷらなどの和食を存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。