食べたかった、お酒の後のこんな一品。

札幌 ラーメンじゃない〆の店

TEXT/KAGEHIRO WATANABE, PHOTO/SHUN TAKEBE

気付けば師走、忘年会シーズンまっただ中。毎日のように飲み歩いている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。終わりよければすべて良し。一年を気持ち良く締めくくりたいものです。それならば、ということで、今回は、定番のラーメンじゃない〆のお店を3軒ご紹介します。お酒で弱った胃腸にやさしくておいしい、そんなとっておきの一品をどうぞ。

札幌で唯一のきしめん専門店。
きしめんのきじや

平たく伸ばしていて、うどんよりも柔らかく食べやすい、きしめん。愛知県民のソウルフードですが、札幌にも一軒だけ、専門店があります。それが、すすきのにある「きしめんのきじや」です。きしめん好きの方なら、かつて桑園にあった「きじ屋」を思い出すかもしれません。もちろん名前の一致は偶然ではなく、すすきの「きじや」は娘夫婦が継いだお店です。ちなみに、店名は、きしめんに雉肉を入れていた伝統から。「きしめん」という言葉自体も「雉麺」が語源だと言われています。

名古屋のきしめんは、たまり醤油をつかっていますが、きじやでは関西風に薄味にしています。先代が大阪できしめんを学んだことがその理由のひとつ。もうひとつは、お酒を飲んだ後に食べやすくするため。深夜も営業しているので、〆で訪れたお客さんのために、消化がよくて、食べやすいものにしているのだそうです。きじやならではの、すすきの流きしめんなのです。

きしめんは、すぐ食べたい人なら「きつね」、ちょっと待ってもいい人なら「たまごとじ」がおすすめとのこと。気分にあわせて、お好みのものをどうぞ。もし待っている時間が気になるなら、おでんもあります。きしめんと同じ出汁でつくる上品な味わいです。夏なら冷やしぶっかけ、冬なら味噌煮込みうどんなど、季節ごとのメニューもあるので、通いつめてみるのも良いのではないでしょうか。


街を見守り続けて約半世紀。ススキノのお父さん、お母さん。
蜂屋

流行のメニューではないけれど、やさしい味がする。いつでも開いていて、行けばほっとする。地下鉄すすきの駅からほど近い第1グリーンビル1階の蜂屋もそんなお店です。開店したのは昭和43年(1968年)。当時、界隈でいちばん立派だったビルはいつの間にかいちばん古いビルとなり、蜂屋もビルでいちばんの古株になりました。店の場所は開店当時からかわらず、カウンターやレジ台もそのまま。手で開けたり閉じたりしているうちにすり減った引き出しに、半世紀近い年月が刻まれています。

地方から出てきてずっと夫婦でお店を切り盛り。ときには相談にものってくれる「すすきののお父さん、お母さん」です。店にはカウンターがあるだけ。なので、自然とカウンターごしに話してしまう。もちろん、お店のあたたかい雰囲気あってのことです。お店の昔ながらの味は、ご夫婦と同じように地方から出てきたお客さんにとって、おふくろの味。そんなところも、この場所で親しまれ続けている理由のひとつかもしれません。ちなみに、店名には、蜂の巣のように大勢が集まる場所になってほしいという願いが込められていて、照明のフードも蜂の巣をイメージしているのだそうです。

お酒は無し。夜中まで開いているので〆にぴったりです。7時間煮込んだサバ味噌に、小麦粉でつくった昔ながらの甘口カレーライス、出汁の効いたお茶漬け。お酒を飲んだ後の胃にも舌にもやさしいが並びます。テイクアウトもできて、一番人気は、その名のとおり煮たまごが丸ごと入った「煮たまごおにぎり」。ご飯自体にも秘密の味つけがしてあって、冷たくて美味しく食べられます。飲んだ後の〆に、あるいは飲む前にちょっと小腹を満たしたいなんてときには、ぜひこのお店へ。



シックなバーで、納豆のスパゲッティー。
顔 caao

円山裏参道にある2軒の「caao」。西24丁目、地下鉄東西線「円山公園駅」のそばにある「caao via」が1号店、西22丁目にある「顔 caao」が2号店になります。どちらもイタリアンがメインのダインニングバーでしたが、2015年の11月をもって1号店がアジアンの店にリニューアル。それにともなって、caaoの“顔”ともいうべき人気メニュー「納豆カルボナーラ」が食べられるのは、2号店だけとなりました。

一流ホテルのレストランで腕を磨いたオーナーシェフが、お客さんから「納豆をつかったスパゲッティーを」というリクエストを受けたことがきっかけで生まれた「納豆カルボナーラ」。このメニューは、カルボナーラにただ納豆を入れるというものではなく、オリーブオイル、ニンニクの後に醤油を入れて少し焦がすなど、和風な味付けも加えられている完全なオリジナル。クリーミーなソースの中で、納豆のほろ苦い味がよいアクセントになっています。

「冷たいチーズフォンデュ」も顔のオリジナル。冷やしているのに、独自のレシピにより、チーズはやわらかいまま。時期を問わず美味しく食べることができます。
その他、メニューは、餃子やナシゴレンまでバリエーションゆたか。奇数月には、フルコースを堪能できるワイン会も行われていて、正式なディナーにも気軽なデートにもぴったりなお店でした。