うまい餃子、だけじゃありません。
餃子館 TEXT/REINA ABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI期待は良い意味で裏切られます。餃子以外にも多彩な料理。誰もが親しみやすい「餃子」と「館」を合わせた覚えやすくスタンダードな名前と豊富なメニューで、地元で愛される中国料理店といった雰囲気です。店長で料理長の須藤さんは東京のご出身。すでに35年にわたるキャリアを持ちます。学校を卒業して料理人として働くためにいくつかの店の門を叩いたとき、ある中国料理店で出された棒々鶏や焼きそばがあまりに美味しく、こんなに美味しいものが毎日食べられるならと、そのまま中華の道へ。昭和元年創業というその名店で料理長まで務めたのち、縁あって札幌へ招かれました。老舗で培った技術とセンスを基本にしながら、「日々食べられる価格帯でどれだけ美味しく作るか」を信条に、厨房の指揮をとっています。
開店当初から変わらない名物「肉焼き餃子」。製麺所に餃子館専用で作ってもらっているという皮は厚め。蒸し焼きというより、多めの湯で煮るように焼き上げており、モチモチ食感の皮と具材が食べごたえ十分。その名の通りの「野菜多めの焼き餃子」もあり、女性に人気だそうです。そして、卓にやってきた「五目おこげ」は、たっぷり入ったおこげと、これまた具沢山のあんの丼ふたつ。熱々と熱々が出会えば「ジュジューッ」とたまらない音。見た目、音、香りまで美味しい逸品です。途中でお酢をかければ、味の変化も楽しめます。きつね色のおこげは、最初のうちはザクザクとした歯ごたえ、次第にあんが浸みてとろりと。おこげもお店で手作りしており、鍋にごはんを薄くはり付け、温めて乾燥させるそうです。家庭でも作れるんですよ、と教えてくれました。
餃子館が店を構えるのは、木工団地や鉄工団地など数多くの工場が建ち並ぶ発寒。そこで汗を流す働き手たちが、味・スピード・量の三拍子揃った店を信頼するのは必至。そんなわけで、平日の昼時は男性客が9割を占めます。おなかいっぱい食べて午後からも頑張ってもらえるようにと、量は自然と増えていったそうです。西区方面を回るときの楽しみにしているという営業マンも遠くから訪れるのだとか。最後にいただいた棒々鶏は、深いコクを感じる味わい。もしかして……と須藤さんに聞くと、かつて自身が心から美味しいと感じた、あの老舗の味をベースにしたもの。そんなふうに、難しい味付けではなく、シンプルな美味しさと素直に向き合う。料理にかける思いがあふれたひと皿が待っています。
餃子館
札幌市西区発寒8条14丁目5-6
TEL.011-666-2239
営業時間/火〜金曜
ランチ 11:00~14:30
ディナー 17:00〜21:00
土・日曜・祝祭日
11:00〜21:00
定休日/月曜
祝日の場合は営業、翌火曜休み
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