時代の移り変わりを見守りながら。

ランチ & 喫茶 マーヴィ

TEXT/YUSUKE TOKOSHIMA, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

札幌駅の北口から北海道大学の正門へ向かう道すがらにあるランチ & 喫茶 マーヴィ。こぢんまりとした入り口とは裏腹に、奥行きのあるお店です。別珍の椅子やシャンデリア。ザ・昭和のノスタルジックな空間が広がります。今から26年前、「北大の学生が来てくれるだろう」、そんな気持ちで店をはじめたというマスターの白崎さん。当初は、その思惑通りにサークルの学生たちなどで大いに賑わったそうです。しかし、直接会わなくても話ができるケータイという文明の利器が学生たちの姿を奪っていきました。

ランチのオーダーが入ると流れるように調理をこなし、整理整頓の行き届いたデシャップ台で盛りつけ。若い頃、ホテルの厨房で養ったという手さばきで、あっという間に一皿が完成しました。「サラリーマンのお昼休みを考えて、来店から30分以内に食べてもらえるように」と白崎さん。リーズナブルな価格と、創業以来変わらないおいしさが評判となり、お昼時ともなれば40席以上ある椅子がすべて埋まるほどの忙しさ。まさに戦争だそうです。「ゆくゆくはのんびりBARでもやろうと思ってたんだけどなあ」と照れくさそうに笑います。ランチどきにピークを迎えるお店になろうとは……。とても想像していなかったそうです。

手づくりの特製デミグラスソースでいただくポークカツレツは衣がさくさく、お肉はやわらか。鶏の胸肉をさっぱりと仕上げた生姜焼きも食べ応え十分。650円でこの味とボリュームはうれしい限りです。コーヒーへのこだわりももちろん健在。「ちょっと冷めたぐらいがいい」という、オリジナルのコーヒーはエスプレッソブレンド。とろみがあり、かすかにブランデーのような風味が広がります。喫茶店と洋食屋。2つの顔を持ち合わせるお店へと、時代の流れに沿うように変化してきました。毎週金曜日には、北海道大学の2つのサークルの学生たちが集まり会合を開いているそうです。これは、開業時から30年以上続いているとのこと。古き良き時代のおもかげがしっかりと息づいていました。